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看護師の離職を防ぐにはどうすればよいのか

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看護師は慢性的に離職率が高く、その背景には夜勤時間の長さだけでなく、バーンアウト(燃え尽き症候群)があるといわれています。では、このバーンアウトのリスクを低減し看護師の離職を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。行動経済学の視点から考えます。

思いやりのある人の方が看護師に向いているとは限らない

一般に、思いやりのある人の方が看護師に向いていると考えられています。それは、自分が患者になった場合を考えてみれば明らかです。二人の看護師がいたとして、自分にやさしく接してくれて、より親身になってくれる看護師に看護してもらいたいと思うのは当然です。

行動経済学に利他性という概念があります。

これは、自分よりも他人の利益を優先し、他人の喜びを自分のことのように喜ぶような性質のことをいいます。大竹文雄/編著、平井啓/編著『医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者』(東洋経済新報社)によると、看護師に対するアンケート調査を分析した結果、利他的な看護師ほど心理的にバーンアウトしやすいことが明らかになったといいます。また、バーンアウトの症状が強い看護師ほど離職率が高いことが知られています。

いずれにしても、利他的で思いやりのある人の方が看護師に向いているとは必ずしもいえないということです

患者に共感する看護師はバーンアウトのリスクが高くなる

亀田達也氏は『モラルの起源 実験社会科学からの問い』(岩波新書 新赤版)のなかで「(前略)近年の研究では、共感とは、こうした『思いやり』だけでなく身体模倣や情動の伝染などを含む重層的なシステムであり、その一部はヒト以外の動物たちにも共有されているのではないかと指摘されています」としています。この指摘が正しいとすると、患者に共感する看護師には患者の情動が伝染することになります。では、患者に共感する看護師はなぜバーンアウトのリスクが高くなるのでしょうか。

いくつか理由が考えられます。なかでも、看護師は患者の死に立ち会うという特殊な職業だということは、バーンアウトのリスクが高くなる理由の一つとしてあげることができます。つまり、死に直面した患者の情動が看護師に伝染し、本人の精神のもち方に悪影響を及ぼしてしまうということです。それは想像に難くありません。

行動経済学の知見を生かし看護師の離職を防ぐ方法

これまでの議論を踏まえると、看護師の離職を防ぐには、夜勤時間を短くするだけでは必ずしも十分ではなく、看護師のバーンアウトを防ぐことも有効だということになります。従って、人事担当者は次のような施策を講ずる必要があります。

当該の看護師がどのような利他性をもっているかを把握しておく

行動経済学の知見によれば、純粋に利他的な看護師ほどバーンアウトしやすい傾向があります。思いやりのある人の方が看護師に向いていると誤解し、そういった看護師をバーンアウトしやすいような部署で働かせ続けるのは、看護師本人だけでなく医療機関にとっても不幸なことです。

従って、看護師のバーンアウトを防いで適材適所に人材を配置するという意味でも、人事担当者は、当該の看護師がどのような利他性をもっているかを把握しておく必要があります

なお、先に紹介した『医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者』(東洋経済新報社)によれば「例えば、『仕事を通して他者を手助けしたいから』『仕事を通して他者によいことをするのが重要だから』という他者配慮の動機をもって看護師として働いている人ほど、バーンアウトしやすいようだ。患者の感情の変化が自分にも伝染してしまったり、患者の苦痛を想像したりする傾向の強い看護師ほど、バーンアウトしやすいこともわかっている」と指摘しています。

当該の看護師が持つバーンアウトのリスクに応じた措置を講ずる

当該の看護師がもつ利他性、つまりバーンアウトのリスクが分かったら、そのリスクに見合った部署に配置する必要があります

当該看護師のバーンアウトのリスクがほとんどないと判断したら、その看護師は症状が悪化している患者と接する部署に配置しても問題は少ないでしょう。結局、そういった重篤な患者でも誰かが看護する必要があります。

しかし、当該看護師のバーンアウトのリスクが高いと判断したら話は別です。患者の情動が伝染して看護師に悪影響を与えないような措置を講ずる必要があります。具体的には、患者と直接的に接する機会が少ない部署に配置したり、患者と接するにしても症状が軽い患者と接するような部署に配置するのです。

これまでの議論をまとめます。留意すべきは、思いやりのある人の方が看護師に向いているとは限らないということ、患者に共感する看護師はバーンアウトのリスクが高くなることです。従って、人事担当者は、当該看護師のバーンアウトのリスクに見合った部署に配置する必要があります。これが、行動経済学の知見から導き出される、看護師の離職を防ぐ一つの方法です。

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