デジタルトランスフォーメーションが変えるマーケティングの概念
インターネットの普及に伴い現在、世界的にデジタルトランスフォーメーションが加速しています。今回はそのデジタルトランスフォーメーションの進展についてご説明したいと思います。
目次
デジタルトランスフォーメーションとは
デジタルトランスフォーメーションとはITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという概念です。この変化は段階を経て社会に浸透し、大きな影響を及ぼすこととなるでしょう。
総務省の予測によればまず、インフラ、制度、組織、生産方法など従来の社会・経済システムに、AI、IoTなどのICTが導入されます。次に、社会・経済システムはそれらICTを活用できるように変革されます。さらに、ICTの能力を最大限に引き出すことのできる新たな社会・経済システムが誕生することが予想されます。その結果、例えば、製造業が製品から収集したデータを活用した新たなサービスを展開したり、自動化技術を活用した異業種との連携や異業種への進出をしたり、シェアリングサービスが普及して、モノを所有する社会から必要な時だけ利用する社会へ移行し、産業構造そのものが大きく変化していくことが予想されるということになります。
ちなみに日本マイクロソフト株式会社によるデジタルトランスフォーメーションの経済効果調査では2021年までに日本のGDP(国内総生産)の約50%をデジタル製品やデジタルサービスが占め、2021年までにデジタルトランスフォーメーションは、日本のGDPを約11兆円、GDPのCAGR(年平均成長率)を0.4%増加させ、デジタルトランスフォーメーションのリーディングカンパニーは、フォロワーと比較して2倍の恩恵を享受するとの予測がされています。
デジタル・ディスラプションについて
デジタル・ディスラプションとはデジタルテクノロジーによる破壊的イノベーションのこと。
代表的なデジタル・ディスラプターに下記のような企業が挙げられます。
Amazon.com
デジタル・ディスラプターの代表とも言えるAmazon.com。25年前に当初はネットで書籍のみを販売する会社が今や売上高も1,778億ドル(2018年)の世界1位の小売業となりました。その背景にはユーザー・インターフェイスやレコメンデーション機能の、カスタマーレビューなど、ユーザーのことを第一に考えたテクノロジーの導入にあったことは誰もが知るところです。
Uber・Lyft・Grab
「自動車で移動したい人」と「車を所有しており、空き時間がある人」をスマホのGPS機能を使ってマッチングする配車・カーシェアリングサービスで、世界一のタクシー会社になったUber。何よりも驚くべきことはUberが車を1台も所有していないこと。“モノからコトへ”を体現した代表的な企業です。残念ながらUberでは運転手による暴行事件などにより、評価を落としてしまいましたが、安全性をうたうLyft・Grabなどが後に続いて急成長しています。
Airbnb
旅行者と空室の持ち主をネットでマッチングする、民泊サービスを始めたのがAirbnb(エアービー・アンド・ビー)です。Airbnbの素晴らしいところは単に空室を提供するだけにとどまらずガイドブックには載っていない、地元の人が行くレストランや地元の人しかしらないお店などユニークな旅行体験を提供することで旅行業として成立しているところです。
WeWork
コワーキングスペースやシェアオフィスなどのスペースを低料金で提供するサービスで急成長したWeWorkはフリーランサーだけでなく企業のサテライトオフィスとしても活用されています。残念ながら2019年米ウィーカンパニーが上場計画を撤回し、企業価値が急落、株主であるソフトバンクの孫氏がなんと1兆円の追加融資を決めたことは記憶に新しいところですが、自社で不動産を所有することなく世界的にオフィスを展開する商業不動産のディスラプターであることには間違いありません。
Spotify
スウェーデン発のサブスクリプション型(月額定額制)の聴き放題というサービスで世界的な音楽配信サービス企業に躍り出たSpotify。基本無料という斬新なサービスで当初は赤字が続いていましたが、CMスキップやオフラインでも好きな曲を聴けるプレミアム(有料)会員を着実に増やし、黒字化に成功しています。
Netflix
1997年アメリカのカリフォルニア州で初めてオンラインDVDレンタル会社がもはや全世界で157億ドルの売り上げをあげるほどのオンラインDVDレンタル及び映像ストリーミング配信事業会社に成長しました。
こちらもSpotify同様映像ストリーミングサービスの提供により借り手が返却をしなくてはいけないというプロセスをなくしたことが画期的でしたが、テレビ番組や映画の製作まで進出していることも映画製作会社やテレビ局の脅威となっています。
国内でのDX事例
大塚デジタルヘルス
精神科医療においてこれまで蓄積されてきた病歴や症状などの膨大なデータを日本アイ・ビー・エムの開発した人工知能Watson(ワトソン)で解析を行い、データベース化することに成功しました。このことによって現在400万人もいると言われる精神病患者の病気の絞り込みやその治療に役立てることができるようになりました。
ベネッセコーポレーション
それまで赤ペン先生の添削でおなじみの進研ゼミやこどもちゃれんじを2014年からついにタブレット端末を活用したシステムを導入。子供の学習状況を親もスマートフォンからも確認でき、企業、子供、親、3者で学習状況をスムーズに確認・管理することで効率的に学習ができるようになりました。その背景には通信インフラの進展やスマホ・タブレットの普及率があります。
JTB
JTBは旅行業界の中でもいち早くDXに取り組むことを発表した企業でもあり、例えばチャットボットによる観光支援アプリ「JAPAN Trip Navigator」の開発・リリースを行い、旅行者の行動データをフィードバックして分析することでサービスの改良や開発に役立てたり、店舗での接客を効率化させるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入などを積極的に進めています。
日本交通
日本交通もタクシー業界の中でいち早くDXに取り組んだ企業です。今では他の会社でも当たり前のように提供している配車プラットフォーム・アプリをいち早く開発したり、タクシー内に動画サイネージを導入し、利用者を飽きさせないための工夫とともに広告を掲載することで広告料収入も確保するなど、運送料金以外での収益化を実現した企業でもあります。
メルカリ
フリーマーケットのような個人間売買をPCからスマートフォンでの取引に置き換えたことで爆発的に利用者を増やすことに成功したメルカリ。決済に関してはメルカリが間に入って行うことやコンビニで受け渡しができることで個人を特定できない仕組みを作ったことも利用者を増やすことに成功した理由でもあります。安心して取引ができたり、2019年に開始したスマホ決済サービス「メルペイ」ではメルカリでの売上ポイントをメルペイ残高として使用できるなど、常に利用者の利便性を高まる取り組みを行なっています。