効果的な集客ツール「マッチング広告」とは
現在のアドテクノロジー技術の進歩は目覚ましく、広告主の訴求したいターゲットの精度はもちろんのこと、会社と自宅でのPCやスマホなどデバイスを横断した広告の掲載も可能となっています。その代表的手法がクロスデバイスマッチングという技術です。
クロスデバイスマッチングとは複数のデバイスを横断してユーザーに広告を配信する仕組みのことで、この技術により会社のPCで広告を閲覧したユーザーに対して家のPCや個人スマホでも同じ広告を閲覧させることが可能になります。今回はデジタルマーケティングのターゲティングの最先端技術を取り上げて見たいと思います。
クロスデバイスマッチングとは
クロスデバイスマッチングはユーザーの行動履歴、検索ワードからの文脈や位置情報など、ビックデータからAIがそのユーザーを同一人物として特定する技術で、提供会社にはDrawbridge社やTAPAD社、LiveRamp社などが知られています。
例えばDrawbridge社は、AIや機械学習技術によるクロスデバイスマッチング技術を提供する米国企業として知られていますが、Drawbridge社はの保有データ量は世界で30億デバイス以上に及び、データの精度は約97%以上とも言われています。
このクロスデバイスマッチング技術を用いた広告配信については国内外の様々な企業が取り入れており、国内ではソネット・メディア・ネットワークスは、DSP「Logicad」や「i-mobile 」などの企業によって採用され、様々な業種の企業の広告配信に役立てています。
クロスデバイストラッキングとは
また、上記の他に分析ツールとしてクロスデバイストラッキングという方法があります。クロスデバイストラッキングは例えばユーザーが何かものを購入するに到るまでにスマホやタブレットなどデバイスを使用して情報を検索して最終的にPCで購入したとすれば、今まではそれまで購入に至るプロセスは考慮されずに最終的に購入に至ったデバイスで判断されます。
すると広告配信についてもPCユーザーだけに配信すれば良いという偏った施策になってしまいます。そこでこのクロスデバイストラッキングを用いれば、最終的に購入に至るまでにどのデバイスを多く利用し、広告に接触していたかがわかり、適正な広告予算の配分が可能となるわけです。この設定はGoogleAnalyticsの管理画面から>プロパティ>トラッキング情報>データ収集>Google signalsのデータ収集を有効とすることで可能となります。
また、ユーザーが会社のPCやスマホでGoogleのアカウントにサインインしていれば、会社と個人との境目なくデータを収集することも可能になります。
個人情報の取り扱いに関する問題
マッチング広告を説明する上で個人情報の取り扱いについても触れておきたいと思います。
ヨーロッパにおいて2018年5月にGDPR(一般データ保護規制)が施行され世界的に個人情報に関する規制が厳しくなっています。またGoogleは2020年1月14日にChromeブラウザで、トラッキング用サードパーティCookieのサポートを「2年以内」に打ち切る計画を発表。広告のターゲティングやトラッキングで長年に渡ってCookieに依存してき広告配信業者にとって衝撃的なニュースとなったことは記憶に新しいところかと思います。
また、同じく2018年にカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が可決され、2020年1月1日の施行を目前にインターネット広告業界団体やコンソーシアム、ソフトウェア企業などがこのCCPAのガイドラインに準拠できるように整備し始めています。それでもまだ、全体的には整備が遅れている企業も多く、ヨーロッパの企業の多くはまだ完全にGDPRへの準拠が遅れたままという状況です。その背景にはこの規制によりターゲティングにて得られたメリットがなくなるほか、その整備のために膨大なコストが予測されるからです。
そのような中、ウェブブラウザーのFirefoxやサファリ、Google ChromeではEnhanced Tracking Protection機能を追加し、サードパーティCookieをブロックする機能を追加しています。
尚、サードパーティcookieの利用を前提としたDSP、SSP等の広告事業者については、今の所、有効な代替手段も見つかっておらず、現在は先行きは不透明といった状況です。ちなみに上記のようなユーザーの検索行動や位置情報など膨大な情報からAIを用いて推定する技術やWebブラウザーの指紋を利用して個々のユーザーを特定する技術はWebブラウザーのJavaScriptプログラムを通じてブラウザー名、登録されているプラグイン、WebブラウザーやWebブラウザーが動作しているPCのOSなどから個人を推定する技術は Cookieとは異なり、規制の対象外と言えそうです。
また、クロスデバイストラッキングはあくまで広告主が自社でアナリティクスを用いてユーザー行動を分析し、広告運用に活用していく分には問題ないかと思われます。
どちらにしても個人情報の規制の締め付けの流れは今後も続くと思われますので、注視していく必要はあります。しかしながら、広告主の求めるターゲットを特定する技術はその需要の高さゆえ今後においてもさらに進化を続け、すでに検索者の検索キーワードの文脈からその個人を推定する技術なども登場しており、規制側とインターネット事業者とのいたちごっこになる可能性は大きいと思われます。
また日本においても個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律が2020年6月5日、国会で可決成立しました。この改正法は、公布の日から2年以内に施行され流とされ、特に「個人関連情報」の第三者提供に関する規制は、インターネットユーザーのトラッキング、プロファイリングはもとよりターゲティング広告などに関しても規制強化の対象となる可能性があり、広告主、配信会社など広告に関する関係者は今後の動向については注視していく必要があります。