業務に欠かせない資格や知識を従業員に身につけさせる方法
会社にとって、業務に欠かせない資格や知識を従業員に身につけさせることは重要な課題です。しかし、時にそれは業務命令の形をとるなど一方的になりやすいのも事実です。そういう場合は、成人教育の要素を取りれた教育プログラムが必要になってきます。
目次
従業員が仕事上必要としていることを把握する
教育プログラムを実践する際にまず行うべきことは、従業員が仕事上必要としていることを把握することです。具体的には、仕事に対する関心事と仕事で直面している課題です。
仕事に対する関心事
漫然と日々の業務をこなすような従業員は論外ですが、ほとんどの従業員は日々の業務をこなしているうちに、あることに興味を持ったり注意を払ったりするようになります。
たとえば、食品工場に勤めている従業員であれば、目の前で加工されている食材に対して興味をもつでしょうし、その食材の品質にも注意を払うようになるでしょう。また、食材の加工方法に対しても興味をもつかもしれません。
いずれにしても、物事に関心をもつということは、本人にとっては成長の機会です。教育プログラムを実践しようとしている担当者は、従業員が仕事をするうえで何に関心を持っているかを積極的に聞き出して把握しておく必要があります。
仕事で直面している課題
どんなに優秀な従業員であっても、キャリアアップを目指して仕事をしているのであれば、いつかは課題に直面するはずです。そもそも、そういった課題に直面しないような仕事の仕方をしているようであれば、その従業員はいずれAI(人工知能)やロボットに代替されるでしょう。
先に述べた食品工場に勤めている従業員であれば、出来上がった加工食品の品質のバラツキをどう抑えるか、品質を一定にしたうえで製造コストをいかに抑えるか、といった課題に直面することになるでしょう。
今回紹介する教育プログラムの実施担当者が、従業員が直面しているこういった課題を把握することが重要になるのは、次に紹介するように、それが従業員が資格や知識を身につけようとする動機づけになるからです。
従業員に対して資格や知識の必要性を伝える
次に行うべきは、従業員に対して資格や知識を身につける必要性を伝えることです。
確かに、一般の従業員であれば、資格や知識を身につけることは自分のキャリアアップにつながり、それが報酬に影響を与えることも十分承知しているので、学習に対する取り組みはある程度は積極的になります。しかし、学びへの意識が弱い従業員や、これまで多くの資格や知識を得てきたベテラン社員であれば、必ずしもそうではありません。その点には留意する必要があります。
例えば、先に述べた食品工場に勤めている従業員であれば、加工食品の品質のバラツキを抑えるには品質管理の知識が必要になってくるでしょうし、品質を一定にしたうえで製造コストを抑えるのであれば機械工学の知識が必要になるかもしれません。また、新製品を開発するために別の食材を探そうとするのであれば、食材に対する基本的な知識は欠かせません。もちろん、従業員のポジションが高くなれば、全体を見渡す管理者としての視点が求められるようになってきます。
いずれにしても、教育プログラムを実施しようとする担当者にとって重要なことは、従業員の仕事に対する関心事や直面している課題を事前に把握したうえで、資格や知識を身につけることによって仕事の進め方がどのように変わるかを丁寧に伝えることです。そして、もっとも重要なことは、従業員には受け身ではなく主体的に学ぼうという姿勢を促すことです。
適切な学びのタイミングに留意する
いくら優れた教育プログラムを開発しても、それを実施するタイミングを逸したり、または、本人が学習することに納得しないとかえって逆効果になる場合があります。特に留意が必要なのが、新入社員研修とコンプライアンス研修です。
新入社員研修における留意点
会社に入って日の浅い新入社員は、そもそも仕事に対する関心事や仕事で直面している課題があるわけではありません。そうなると、学習に対するニーズのない彼らに対して資格や知識の必要性を伝えることは難しくなります。従って、将来的に彼らがどのような仕事をしたいのかといったことを事前に把握したうえで、教育プログラムを受講する必要性を丁寧に説明する必要があります。
コンプライアンス研修における留意点
今の時代、企業活動にはコンプライアンスの遵守が求められるようになってきました。万一、自社の社員がセクハラやパワハラなど起こしてメディアに取り上げられれば、企業イメージはガタ落ちで業績にも悪影響を及ぼすことにもなります。そのため、企業として従業員にコンプライアンス研修の受講を必須としているところも少なくありません。
ただし、受講する本人が納得していなければコンプライアンス研修の効果は半減してしまいます。従って、コンプライアンス研修においても、従業員に対しては受講の必要性を事前に丁寧に説明して納得してもらう必要があります。