集客プロモーションのヒントにもなる世界の広告
毎年世界中で開かれている広告賞、クリエイターたちにとってはその舞台に立つことは憧れですが、マーケティングの観点においてもその商品やサービスのプロポジションを改めて見直す機会にもつながります。今回はクリエイティブから世界を変える力のある世界の広告賞を参考に新しい時代のマーケティング・クリエイティブとは何かを考察していきたいと思います。
海外おける広告賞
広告やマーケティングに従事している人なら誰もが知る世界の3大広告賞といわれるのが、カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル、 One Show、クリオ賞です。ここで表彰されることは世界中のクリエイターにとって憧れでもあり、その企業のステイタスともなります。
今年はコロナの影響によりほとんどのイベントが中止や延期になりましたが、 One Showはオンラインでの表彰を実施いたしました。日本の受賞企業では森ビル株式会社のブランドムービー「DESIGNING TOKYO」が金賞2つ、銀賞1つを受賞しました。また、同じく国際広告デザイン賞である「D&AD Awards 2020」(主催:Design & Art Direction)においても、銀賞を受賞しています。これにより、森ビルブランドムービー「DESIGNING TOKYO」は、先般発表された「第99回ニューヨークADC賞」を含め、3つの国際広告デザイン賞の受賞を達成したことになります。
引用:https://www.oneclub.org/theoneshow/showcase/
この動画では1956年に創業した森ビルが東京に生きる人々とともに発展し、また新しい文化を創造するための情報を発信しつづける存在であるということを人々のファッションや音楽などのサブカルチャーもおりませながら美しくスピード感のある映像で強くアピールしています。作品の1場面(六本木ヒルズのシーン)にファッションやアート界を牽引してきたの山口小夜子さん(1978年)、坂本龍一さん(1986年)、村上隆さん(2003年)が当時の姿で登場するのも印象的でした。
また、D&AD賞のイエローペンシルに続いて、最高賞であるベスト・オブ・ディシプリンを4個獲得したのは、お馴染みのワッパーにカビが生えていく様子を捉えた、バーガーキングの「Moldy Whopper」です。DAVID / Miami、Publicis / Bucharest、ストックホルムを拠点とするINGOによる制作で、本賞で18個のゴールド、4個のシルバー、1個のブロンズと1個のメリットも獲得しています。ちなみにDAVIDはエージェンシー・オブ・ザ・イヤーを、とバーガーキングはクライアント・オブ・ザ・イヤーも受賞しています。
その名も「The Moldy Whopper(カビの生えたワッパー)」。女性の歌声とともに、34日間かけて、バーガーキングの看板商品であるワッパーがカビに覆われる様子が映し出される動画広告は、8.4億回の表示回数を記録しました。この動画で社時間の経過とともにワッパーが変形し、カビが生える様子を見せることで、「人工物を使っていない」ことを言葉で説明するだけではなく、視覚的に強くアピールしています。同時期にアメリカ国内で展開された、カビの生えたワッパーの交通広告も効いたのでしょうか。キャンペーン後に売り上げは14%増を記録したそうです。なお、バーガーキングはこのキャンペーンについて、以下のようにコメントを残しています。「世界各国で、私たちは合計8500トンの人工原材料を排除しました。1年あたり、38の自由の女神像分の量に相当します。私たちのこの動きが、ファストフード業界を変えることを祈っています」
かつてよりライバル会社であるマクドナルドをネタにした広告を展開して有名なバーガーキングですが昨年は、マクドナルドの店舗の敷地内に入ると、アプリ内でワッパーが1セントで購入できるクーポンが付与されるキャンペーンで、One Showやカンヌライオンズなどの広告賞を総なめにしました。今回の正統派ともいえる広告での受賞で、単なる比較広告だけが武器でないことを世界に知らしめたのではないでしょうか。
国内における広告賞
国内の広告賞で有名なものには朝日新聞社や読売新聞社による広告賞があります。朝日広告賞は1952( 昭和27 )年に創設された朝日広告賞は、昭和、平成、そして令和と、各時代のすぐれた新聞広告を顕彰し、広告文化の発展に寄与してきました。 ちなみに「消費者に有益な広告こそが優れた広告」との基本理念のもと、1984年から実施されており読売新聞社の有する広告媒体、イベントなどを効果的に活用し、顕著な成果を上げた企業・団体による優れたマーケティング活動を顕彰するマーケティング賞として知られています。
特に朝日広告賞は若手クリエイターの登竜門ともいわれ、芸術大学や専門学校生の応募も多数あり、実際に一般の部で受賞されている方も多くみられます。この賞を受賞することは特に広告業界を目指すもの、また身を置くものとして大きな転換期となることはまちがいないでしょう。