[事例研究]デイサービスにカジノを導入した介護施設の場合
デイサービスにカジノを導入して利用者を増やしている介護施設があります。利用者はカジノに何を求めてデイサービスに通っているのでしょうか。また、そんなカジノに匹敵するようなサービスはどのようにして見つければいいのでしょうか。ここからは具体的なヒントを紹介します。
目次
カジノを導入した 社会福祉法人「夢のみずうみ村」
2000年にNPO法人「夢の湖舎」を設立し、翌01年に山口デイサービスセンターを開設。11年に社会福祉法人「夢のみずうみ村」を設立した。山口市のほか、防府市、東京都世田谷区、千葉県浦安市でも介護や自立支援の事業を展開する。
同法人はカジノも導入しています。
施設内で各プログラムに参加するには独自通貨「YUME(ユーメ)」が必要だ。職員の手伝いをしたりクイズに答えたりすると稼げる。利用者同士がルーレットやトランプをするカジノでも手に入る。ゲームに負けると失うこともある。
「何をするにもお金がいる」という日常の感覚を施設内で磨いてもらうための仕掛けだ。「代金をいくら払うのか」といった理解力や認知力、「足りないときはどうするのか」といった計画性、行動力を養えるという。
利用者が求めているのは進歩であってサービスではない
クリステンセン教授たちは『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』(ハーパーコリンズ・ジャパン)のなかで、次のように指摘しています。
何が顧客にその行動をとらせたのかを真に理解しないかぎり、賭けに勝つ確率は低い。だが、イノベーションとは本来、もっと予測可能で、もっと確実に利益をあげられていいはずだ。必要なのは、ものの見方を変えること。だいじなのはプログレス(進歩)であって、プロダクト(商品)ではない。
商品は実際に手にとって見ることができるので、どのようなものかを実感することができます。しかし、進歩は目に見えないので、なかなか実感することはできません。そういうときは、「より○○」「もっと○○」「次は○○」「今度は○○」と考えると理解しやすくなります。先に紹介したカジノの場合であれば、利用者は「次は勝つぞ」と思ってデイサービスセンターに通っているはずです。これが、利用者が求める進歩です。
利用者が求める進歩を提供するサービスとは
利用者が求める進歩を提供するサービスは、具体的にどのように見つければいいのでしょうか。生活の基本的な要件である衣食住遊の視点から得られるヒントをいくつか紹介します。
「衣」における進歩とは
キーワードは、「より綺麗に」「もっと若く」です。
「より綺麗」にということであれば、まず思いつくはお化粧です。専門の美容部員を招いて講習を開くのもいいでしょう。また、普段は着ないような服を着る機会を提供するのもいいでしょう。普段は着ないような服を着ることは「もっと若く」という進歩を叶えることにもなるので、男女問わず導入することができます。
「食」における進歩とは
キーワードは、「より美味しく」です。
「より美味しく」といっても、高価な食材の購入を勧めるのではありません。ソムリエは、ワインの味を変えることができなくても、客にワインを美味しく飲んでもらうことはできます。介護施設についても、これと同じことがいえます。つまり、食材の調理方法や味付け、料理を盛り付ける器などに工夫すれば、デイサービスの利用者に料理をより美味しく味わってもらうことができるでしょう。
「住」における進歩とは
キーワードは、「より快適に」です。
「より快適に」ということであれば、利用者が使っている椅子やテーブルなどを見直すことです。予算が許せば木製の家具を入れるのもいいでしょう。
「遊」における進歩とは
キーワードは、オリンピックのモットーでもある「より速く」「より高く」「より強く」、そして「次は○○」です。
「より速く」「より高く」「より強く」を同時に叶えるのであれば、いま流行っているeスポーツがいいかもしれません。ただし、若者の間で流行っている対戦型ゲームではなく、デイサービスの利用者でも簡単に操作できるシンプルなものの方が合っています。これであれば、観戦している周り人も一緒の盛り上がることができるでしょう。
「次は○○」ということであれば、「次は当てる」ということで、ビンゴゲームがいいかもしれません。ただし、毎回ビンゴ大会を行っても盛り上がりに欠けるので、一定期間を置いて実施した方がいいでしょう。
最後にこれまでの内容をまとめます。デイサービスの利用者を増やそうとするのであれば、まず彼らが求めている進歩を理解する必要があります。そして、その進歩は「より○○」「もっと○○」「次は○○」「今度は○○」といった視点で考えると見つけやすくなります。いずれにしても、デイサービスで提供するサービスは、利用者が求める進歩を叶えるためにあるのです。