整形外科クリニックで、新患・リピーターを逃さず、売り上げを増大させる戦略・方法
近年、高齢化に伴って整形外科クリニックの数が増えています。数が増えてくると、良いサービス内容を提供しているだけでは十分な売り上げにつながりにくいため、はっきりと意図を持って、集患目的の行動を取る必要があります。今回は実際の経験に基づき、その内容を紹介していきます。
整形外科クリニックの増患方法
最初に、私は整形外科クリニックで理学療法士として働くものです。
最近まで働いていたクリニックで、マネージャーとして経営に携わっていました。今回紹介する内容は、その時効果があったものとなります。
その時働いていたクリニックは、外来リハビリとして、
- 理学療法士による個別リハビリ
- 物理療法
- トレーナーによるマッサージ
を提供していました。
来院された方全員にひとまず物理療法を処方し、院長が必要と判断した場合は、加えて個別リハビリの予約を取ってもらうやり方です。
マッサージは特殊な場合の受け皿として設けており、消炎鎮痛処置で診療請求していました。物理療法(orマッサージ)を受ける際は予約なしで、いつ来院しても構いません。施設基準は運動器(Ⅱ)です。
物理療法に関しては、温熱療法や牽引機といったありきたりなものだけでなく、超音波を導入していました。これはスタッフが超音波の機械を患部に当て、硬くなっている筋肉をやわらげたりするもので、トレーナーに担当してもらいました。
物理療法の中でダントツに結果を出していたのでおススメです。
ただし扱う人間が上手く使わないと結果が出にくいので、優れた人材が必要です。
こうすれば外来に来ている高齢者の身体機能が低下してきても、そのままデイケアを薦めることが出来ますし、さらに外出が困難となれば訪問に移行するといった方法がとれます。
外来での増患方法
それではまず最初に、外来での戦略についてです。外来ではいかに単価の高い個別リハビリを多く計上し、かつ物理療法にも来てもらうかがポイントなのですが、個別リハビリの代金が高いから。リハビリがあまり効かないからという理由で来なくなるパターンが結構あります。
初診時に問診票で「ホームページをみて来た」と回答する人は、ホームページ内で個別リハビリを推していたので、基本的にそれを求めて来院しています。
一応診察室でホームページのどこに引っかかったのか、確認した方がよいでしょう。
次に事故等の被害者で、加害者もしくは保険により診療費が保証されている場合、高額になっても問題はありません。骨折や外傷後のリハビリに関しても、「いかないと元の状態に戻りにくい」という意識が働きやすいため、単価が高くても逃げにくいです。
問題は慢性痛の場合に個別リハビリを処方して、あまり効かない場合です。この場合に逃げられてしまうケースがかなり多いです。
これを防ぐためには、とにかく患者さんの現状をしっかりモニターする事が最低条件です。
院長が診察室で聞いても、なかなかリハビリ室とその情報を共有するのが難しいため、リハビリ室でいかにモニターするかが大事です。
とは言え、診察室でリハビリに対してクレームが上がった場合は、外来主任に報告してもらうよう院長にお願いしておきました。
リハビリ室では理学療法士、物療を行うリハビリ助手の方、トレーナーが、それぞれ必ず現状について聴取します。
なので、理学療法士が物理療法に対するクレームを聞いたり、リハビリ助手が個別リハビリに対するクレームを聞いた場合でも、気まずいと思わずにちゃんと報告して共有し、それに対して何かしらの対策行動を取っていくべきです。
個別リハビリに対してクレームがあった場合は、まず担当セラピストを変えます。
2回変更くらいまでは引っ張れることが多かったですが、そこは患者の雰囲気で調節します。それでも不満が治まらない時はマッサージを処方し、たとえ問題が解決しにくくても気持ちいいから来院する、という状況をねらいます。
次に物理療法に対してクレームが出た時、個別リハビリの処方が出ていなければ、それを薦めます。現状に不満があるので、受け入れてもらいやすいです。
これにより単価が上がります。すでに個別リハビリの処方が出ている場合は、物理療法のメニューが豊富であればプログラム変更できますが、無理なら物理療法での来院は切ってもいいと思います。個別リハがダメな場合はマッサージ処方するのに、物理療法でしなかったのは、個別リハで来ている人は専門家に触ってもらう目的で来ているため、機械の治療では物足りなく感じるからです。また、マッサージは人件費に対するコストパフォーマンスが悪いため、できるだけ処方したくないという事情もありました。
外来の戦略で他に意識したのは、「リピーターをいかに逃がさないか」です。
この目的を果たすため、診察室で今回の症状を診断するとともに、前回のリハビリはどうだったか院長に聞いてもらいました。そこで「このリハビリが良かった」と教えてもらい、それを処方します。もちろん今回の症状が適応外ならダメですが、前回そのリハビリ良かったからリピートしているわけで、その内容を信頼しているため継続しやすいです。この場合でも、もしクレームが出たら前述のサイクルに入れます。
外来患者を積極的に集める方法
次に新しい外来患者を積極的に集める方法です。
私が行ったのは、リピーターを利用する方法です。
これを行う前提条件として、そのリピーターが何らかのコミュニティに属している必要があります。
単純に口コミをしてもらうだけでなく、
「もしよければその集まりにお邪魔させてもらえませんか?」
と営業をかけるのです。
そこで
- 専門家が教える運動講座
- 痛みのお悩み相談会
などを行い、集客するのです。
一番効果があったのは、その場で理学療法士が少し体を触ってあげることでした。
理学療法士が魅力的である(技術だけでなくトークも上手)のが条件ですが、かなりの数を集める事ができました。コミュニティを使う方法が困難なら、クリニックのリハビリ室で無料イベントを行うのもありです。
その場合いかにイベントを知ってもらうかがカギです。
この時もリピーターに宣伝してもらう以外に、チラシのポスティングや、ホームページでのお知らせ、利用できるなら地域の掲示板などもいいと思います。
デイケアの新規集客方法
続いてデイケアでの新規集客方法です。
デイケアでのリハビリは、以前は理学療法士が個別リハビリをした場合に別途点数が加算されていたのですが、現在はデイケアに対する支払いの中に含まれるようになってしまいました。
もちろん個別リハビリを行ってもよいのですが、理学療法士が評価を行いプログラムを立案すれば、実施者は有資格者でなくても「デイケア」として介護報酬を請求できるので、介護スタッフやトレーナー、健康運動指導士・健康運動実践指導者にやってもらった方が、人件費的にコストパフォーマンスが良好です。
よってそのような動きを取るデイケア施設が増えたのを逆手に取り、コストが多少かかっても、理学療法士が個別にリハビリするのを売りとしたのです。これにより、病院退院後も専門的なリハビリが必要なケースを集めることができました。
もちろん、こういった戦略を取っている他施設はあるので、さらに特別感を出すため、自動車メーカーであるHondaがリハビリ用機器として開発した「歩行アシスト」をレンタルしました。
これは製造台数が少ないためレンタルのみで世にだしており、さらにNHKなどがテレビで取り上げたため、一部で非常に話題となりました。
その名の通り機械が歩行をアシストしてくれ、歩行能力の向上だけでなく、脳卒中後で麻痺がある方の歩行改善にも使えるものです。当時同一県内で利用できる施設は、そのクリニックをふくめて6つでした。
以上のような「当デイケアの売り」を明確にしたうえで、ケアマネージャーがいる所へ営業をかけます。
営業をして分かったのですが、意外とデイケアをやっていることを地域のケアマネージャーに知られていなかったのです。なので、積極的に営業をしている所は別にして、ホームページや口コミだけでは不十分なケースが多いと思います。
そのクリニックでは院長の奥様が営業の役を買って出てくださったので、営業先にとてもインパクトを与えることができたのも良かったと思います。「院長の奥さんがでてくるなんて」と印象づけは完璧です。
あとはサービスの特徴をまとめたパンフレットを渡しておき、ケアマネージャーが利用者を振ってくれるのを待ちます。ひとまず体験利用ができるようにもしていました。
集客の明確化:デイケアで狙うターゲットとは!?
最後にデイケアでねらうべきターゲットの話です。
介護保険は3年ごとに改正され、要支援1・2の方へのリハビリは点数が取りにくくなっています。
なぜなら比較的障害が軽いレベルの人は、専門的なリハビリを限られた時間受けるよりも、自治体や地域の体操教室などでたくさん運動した方が、介護度の重症化を防ぎやすいからです。
この根拠となるデータが、だいぶ前から厚生労働省にあがっているようので、ねらうのは中重度の要介護者となります。
デイケアではできる限り他施設との差別化を図り、その内容を周知してもらうよう営業努力をかかさないのが、当たり前のようで本当に大事です。自分たちだけで自分の施設の状態を分析するのではなく、患者や利用者にアンケートを実施するのも、経営戦略を練るうえでやった方がいいと思います。